30. 危うい「メンタルケア」業界

 耳目を引く派手な広告でさも何かをやっているような内容であるが、その内容たるや簡便、軽薄過ぎてお世辞にも褒められたものではない。中には「日本国が公的に認める学術団体に相当する」などというのをキャッチ・フレーズにして「客」集めに余念のない団体もあるが、そのようなところで認定されたところで専門の学術研究員になれるわけでもなく、その資格自体が何らかの形で利用されたにしてもその内容が実効的なものとして現実的に機能したわけでもない。言ってみればお手軽な「満足感」以外には何も残るものがない類のものである。やはりほんとうにその道でやるのであれば最低4年生大学卒業後、大学院の修士、できれば海外の大学で学ぶのが本筋であろうが、その時間もお金もはないものがついつい手を出したくなるような設定になっているのがこの「メンタルケア業界」一般である。たとえ安易ではあってもそれで自分を見直す視点を得られるというのであれば、それすら現実的にはあり得ないと思うが、それはそれでよしとするしかない程度のものなのである。私が10数年所属している「日本カウンセリング学会」などは地味で時間もかかるが、やはり内容的には研究者として正当な道筋であろうと思われる。そこでも認定資格は得られるが私のように二足三足の草鞋をはいている者にはなかなか時間がとれないが、私自身はそれで納得している。実際に現場でその理論と実践を確認することもできた。しかし、空疎なものに限って「お上」のお墨付きを求めるのはどこの世界も同じであるようである。分かり切ったことをまた敢えて言えば、現在のメンタルケアビジネス業界が実際に為していること、為し得ることは単なる「御用学者」と称される者達の追随以上のものではありようもなく、いくら学術研究などといったところで決して新たな求心力を秘めたを展開などはその可能性の片鱗としても見ることは不可能であろう。少なくとも知的好奇心に溢れた者にとっては不充分であると同時に危険でもあり時間の浪費でしかない。ただし、金儲けしか頭にないものは別である。

                                                2012 8/1

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