過日亡くなった前都知事について、その恩恵に浴した猪瀬何某が「マルローのような政治家だった」と言っていた。周知のように、アンドレ・マルローは、フランスの小説家、思想家であり、反ファシズムの闘士でもあり、コミュニストと訣別するまで、政治に参画する西欧知識人の先端に立ち続けた。ドゴール政権では情報相、文化相として活躍した人でもあるが、その言動、業績、作品群、その内容の質と量を比較するのには無理があるというよりまったく比較にならない。このようなことを安易に言えてしまう者の神経、精神とは不可解、言ってしまえば、単なる俗物ということになる。マルローとの比較、それは似て非なりどころか、似ても似つかぬというところである。マルローに近づこうと思った一瞬はあったかもしれぬが、それは叶わぬことであったことは本人が一番知っていることでもあろう。
2022 6/9