105.「レジオンドヌール勲章」

 昨今、日本でもよく耳目に触れるフランスの勲章である。それについて詳しいことはここでは避けるが、その勲章にまつわる面白い話を取り上げてみたいと思う。

 ラファイエット、ジェラール・ド・ネルヴァル、ジョルジュ・サンド、ギュスターブ・クールベ、モーパッサン、モーリス・ラベル、マリー・キュリーとピエール、クロード・マネ、ジョルジュ・ベルナソス、サルトル、ボーヴォワール、アルベール・カミュ、ブリジット・バルドー、カトリーヌ・ドヌーブ、クラウディア・カルディナーレ、

 彼らはレジオンドヌール勲章を辞退した人たち、というより拒否したと言った方がよいかもしれない。その断り方もさすがフランス人と思えるようなものばかりである。

 勲章を拒否した際のコメントなどをいくつか紹介すると、「何が名誉のあることで何がそうでないかは国が決めることではない」(エドモン・メール)という単刀直入なものから「あれを拒否したのは大変結構だが、それだけじゃなくあれに値しないようじゃなきゃいけなかったな。」とジャック・プレヴェールはレジオンドヌール勲章を拒否したルイ・アラゴンに言っている。「くだらないリボン、恥ずかしくて真っ赤」とバカにしていたレオ・フェレやジョルジュ・ブラッサンスなど。日本でもよく知られている女優ブリジット・バルドーは受け取りに行くことを拒否している。小学生でも知っている「キュリー夫妻」、ピエールは「必要性を感じません」と言った。ジョルジュ・サンドは叙勲を打診した大臣に「そんなことよしてくださいな、酒保のおばあちゃんみたいになりたくないの!」と返信した。即座に拒否したモーリス・ラベルについてエリック・サティの言うことも面白い。サティ曰く「ラヴェルはレジオンドヌールを拒否したかもしれないが、ラヴェルの音楽はレジオンドヌールをすっかり受け入れているよ。」。さらにジョルジュ・ベルナソスに至っては4度も拒否している。

 サルトル、カミュ、ボーヴォワールについては受賞拒否はあまりにも当然過ぎるであろうと思われるが、その他の人々については意外でもあり、その断り方がエスプリが効いて面白かったので書き記しておくことにした。

 さて、日本の勲章にまつわる話はどうか、敢えて実例を挙げる必要もあるまい。少なくとフランスで実際にあり得た上記のような具体例はほとんど見当たらない。どれも「お上」から戴けるものをありがたく戴いているといった具合である。中には「国に認められたこと」をその価値が保証されたかのごとく喜んでいる者さえいるが、それが大方の実情でもある。                                  

                                    2016 10/22

 

 

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