100.「日本会議の研究」の著者菅野完氏について

 私は、この本をまだ読んではいないが、日刊ゲンダイの「注目の人直撃」のインタビューを読んだだけでも菅野氏の問題意識とその疑問を追う真摯な姿勢が見えて来る。そして、その探求が当然行き着くであろうところに納得している。私も去年8月頃このサイトで「仏教者が『日本を守る会』とは」と題して「日本会議」の前身でもある「日本を守る会」の疑問点について思うところを書いたことがある。そして、菅野氏同様に私も「日本会議」は本来の「右翼」でも「保守」でもないと思っている。また、彼は「右翼の本来の役割は『国を国家から守ること』だと思う」と言う。その通りで、自称「右翼」が国と国家すなわち時の政権とを混同しているケースが多々あるが、これなども本来の右翼、純粋右翼の範疇からすれば到底右翼などと呼べる代物ではないことになる。どんなに堕落した政権でもただそれに付き従うだけが右翼というものならとても国など守ることなどできはしない。保守論壇紙「正論」、「WILL」、「諸君」、などに寄稿している「識者」の多くがこのレベルの低い「日本会議」の周辺の人々だと言う。国を憂えるどころか国家、政権に寄り添うだけの怠惰な人々の集いということであろう。それは「本来の姿」からすれば右翼、保守などととても言い得るものではない。

 「ネトウヨ」、「ヘイトスピーチ」のネタ元が保守論壇誌であるらしい。菅野氏は変な人たちがいると思って調べていくうちにネタ元から「日本会議」に行き当たったということである。この流れは良質な市民の在り様を垣間見させてくれる。私などは、「ネトウヨ」、「ヘイトスピーチ」などは論外でこの低俗さには一瞬たりとも関わる時間が惜しくなってしまう方なのである。したがって、話題にしたこともない。おそらくこのサイトに登場した最初にして最後の言葉になると思っている。

 「日本会議」の役員名簿からこの組織がとてつもない巨大な組織のように見えるが実は中身は空っぽというのも象徴的である。労働組合、業界団体などのような圧力団体と比べて規模は小さく、財界に強力なスポンサーがいるわけでもなく、この組織の小ささ、弱さが目に付いたということである。中身は空っぽ、小ささ、弱さ、などもAbeと重なる。

 菅野氏の事実に基づいた明解な論述は、「詐欺師」たち立ち向かうために誰もが知って置かなくてはいけない知識が詰まっているはず。是非読むべき一冊であろう。

 最後に、自分は普通のサラリーマンでなどと前置きして日常のつまらない瑣事一般を垂れ流して「つぶやく」ことが「普通」だと思っていたら大間違いなのである。それは「普通」でも何でもない「異常」なのである。「普通幻想」の罠にまんまとはめられた「隷属の民」の一人であると思った方がいい。

 菅野氏は普通のサラリーマンであった。これが本当のそれこそ本来の「普通」なのである。

 

 

                                 2016 6/3

追記:菅野氏はやはり極一般的なサラリーマンではなかった。少なくとも、問題意識のないサラリーマンではなかった。「普通」「一般」のコンセプトも再検討が必要であろう。

 

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