桜は青い空がよく似合う
闇夜の花もまた一興
されど、落花 しだらなく
なべて一様
見事とも 潔いとも思われぬ
もののあわれとは
奈良の都に咲く花の
香るがごとくの散り際にあり
「源氏物語」を「もののあわれ」と捉えたのは本居宣長である。この「源氏物語」を安っぽい道徳律で好色書扱いしたり、「読んで会社の業務の役に立つのか」などと言う笑止千万な実学偏向の拝金主義者たちに日本の文化も前途も語る資格はあるまい。すなわち、彼らには日本人としての「固有性」はすでに失われているのである。日本文化も知らず「国を愛する」、「世界に羽ばたく」などと言ってみてもそれは虚妄であり、作り出された「狂気」でもあろう。桜の木の下で騒ぐことだけが日本人ではあるまい。それは、しだらなく散る花にも似て、なべて一様に集うことで安らぎ、後はただ目先のことに追われ、取り留もなく散り急ぐだけである。
2016 4月落花の折