最近、アルフレッド・アドラーに関係した本が読まれていると聞く。彼の理論体系は100年程度前に完成しているが20年程前から社会精神医学、自我心理学、認知療法、システム論などの先駆者としても再評価されている。どちらにしても突然今頃になって彼の理論が再燃し始めたということではない。
アドラー理論の特徴の一つに客観事実よりも客観事実に対する主観的意味付けのシステムを重視することが挙げられるが、これなども「客観事実」の成否よりも、それに対する主観的意味付けの方を重視して、その「意味付け」を成り立たせる精神構造そのものにメスを入れるというスタンスが取られている。
この主観的意味付けのシステムの検証でメンタリティの成熟度は推し量れる。最近の事例から言えば、種々雑多な客観的事象から「日本人の民度は高い」などと結論付けた場合、その種々の客観事実よりそのことから「民度が高い」と結論付ける主観的意味付けの精神構造そのものを検証するのである。そこではメンタリティそのものの「質」が見て取れるであろう。また、もし「日本人は民度が高い」などという結論を訳もなく快く思うのであれば受け取る側の多くは「小児病的疾患」を患っているのである。執拗な自己正当化、自画自賛などは未成熟な者がすることだからである。もっとほんとうの意味で「大人になる」必要があると思われる。
2014 12/29