144.ヴィソツキーを愛した国民であろう。あり得ぬ。

ウラジミール・ヴィソツキーをあれだけ愛した多くの国民が、こんな状態を手放しで許しているはずはないと思っている。そして、最近のシュワルツェネッガーのメッセージもそんなことに通底していると思われる。彼は、「自分の父親はナチスであったが、政府にだまされ身体も精神もおかしくなり、痛みと共に余生を終えた、父親のようになってほしくない」とロシア国民に訴えている。そして、プーチンに対しても、「あなたが始めた、あなたが先導してきた戦争。止めることができるのもあなただ」と訴えた。しかし、ヒットラーなどと同質のその手の人間にどこまで有効性があるかどうかはわからないが、訴えるメッセージの内容は、何の痛みもない安全地帯でぬるま湯に浸かった状態で放つ饒舌とはまったく異質で、説得力のあるものであった。有効性の有無よりも、今このようなことを発信することが重要なのである。言葉遊び、解釈ごっこ、戦争ゲームを楽しんでいる場合ではない。と言うより、それは、そのつもりでも、一瞬にして覆されることを思い知らされるだけである。我々は、どんな隅にいても歴史の只中にいるのであって、俯瞰している気になっても現在進行形の歴史を外から眺めることはできないのである。そんなことすらわかっていない「専門家」、一言居士の「トーシロー」が何と多いことか改めて確認することもできた。

                         2022 3/19  

 

※ウラジミール・ヴィソツキー:ロシアの俳優、詩人、シンガーソングライター

 

アーカイブ
TOP