もし私に信じる神があるとすれば
それは踊ることを知っている神である。
<ニーチェ>
このニーチェの言葉は、橋本ルシアがその著書「フラメンコ、この愛しきこころーフラメンコの精髄ー」(2004年刊)のエピグラフとして引用した言葉でもある。そして、そこには橋本ルシアの根本的姿勢が集約されていると言ってもよいだろう。
橋本ルシアは東京大学哲学科を卒業。その間に多くの世界レベルの哲学者の原典に接している。
精神の豊饒を求めて彷徨う魂は、同時に嘗て身の内に秘めてしまった「身体性」そのものをも否応なく覚醒させる。
この著者の提示するるものは「舞踊」についての深い洞察もさることながら、「生き方」そのものの問いかけとしても興味深く、意義深いものがある。なぜなら、そこには「精神」と「肉体」のすべてを賭した命懸けの追究の道筋が見えるからである。
彼女はフラメンコ舞踊家であると同時に、飽くなき舞踊研究者でもあり、そして古代史研究家でもある。彼女は本来の意味での「哲学する」舞踊家なのである。
2010 4/30