134.「貧すれば鈍する」者たちには

  「貧すれば鈍する」とは、周知の通り、貧乏をすると頭の働きが鈍くなり情けない心を持つようになるということであるが、これは、為政者にとっては極めて都合のいいことであろう。考える余裕も与えず働かせるということで、どのような「悪法」も、すなわち為政者たちに取って都合の良い法律は何なく通せるからである。その後も、考える時間のない者たちは当然その悪法の存在すら忘れ去る。やがて、息苦しさを感じた時には、首にロープが巻き付いていて振り落とそうとしても振り落とせなくなるといった寸法である。

「貧すれば鈍する」と「窮すれば通じる」、それを単純にマイナス思考とプラス思考などと別の括り方をしてまとめることはできない。「貧すれば鈍する」という実態を知れば、それが「窮すれば通ず」という状態にはなり得ないことがわかるだろう。すなわち、「貧すれば鈍する」ことが常態化すれば、必然的に思考は停止状態となり、もはや活路を見出すということなどはまったく不可能となるのである。貧しい中から活路を見出し得たという美談などは、実際にはあってないようなものである。作為的に作られた話と言った方がいいだろう。

 一部を除いて、多くの者を生かさず殺さず経済的に追い込むことで「余計なこと」は考えない、従順な民にすることが為政者にとっては具合がよいということは言うまでもないこと。しかし、これは危険な道にそのまま繋がっているということである。

 

                                  2021 6/9

 

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