5.パーソナル・ニュース (橋本ルシア氏)

ーフラメンコ舞踊家 橋本ルシア氏ー

 フラメンコ舞踊家の橋本ルシア氏が今年(2009年)もまたスペインに行く。聞けば、今回は取材が中心となるらしい。

 彼女の古今東西の渉猟の深さは話を聞いていてもよく分かるが、必要がない限りその博識を見せない。話をしていると、フラメンコについてはもちろんのこと、古代史から宇宙論まで話はつきることがない。ふと、これだけの人物が(フラメンコをやっている人には申し訳ないが)どうしてフラメンコを選んだのだろうと思ってしまう。このことだけでもこのようなフラメンコ舞踊家は日本いや世界でも唯一無二であろうと思わざるをえない。もちろん踊りについても他に追随を許さない独特の世界を持っている舞踊家である。彼女はもともと踊り、体を動かすことは幼い時から好きだったらしい。

 また、関係者から聴くと、高校時代は全国でNO1,要するにトップクラスで東京大学に入ったことになる。時代は学園紛争の頃、彼女が研究室でどのように乱反射したか具体的に知る由もないが、想像することは比較的容易である。彼女にとって踊りは人生、その踊りは飽くまでフラメンコ、そして、彼女は強調する「フラメンコで生きるのではなく、フラメンコを生きる」ことを。

彼女の渡西、楽しみである。

                                                        

 

<追記>

 スペインから橋本ルシア氏より電話があり、最近観たジェルバブエナ(スペインの女性の踊り手)は2007年に橋本ルシア氏がテアトロ・ライブで踊った踊り方と同じだと言っていた。そして、その場でジェルバブエナの踊りを観ていた日本の踊り手にジェルバブエナの住所を聞かれたそうである。その住所を聞いた人は2007年の橋本氏の踊りを観ていた人でもあった。橋本ルシア氏とジェルバブエナとはプライべイトでも、また踊りでの師弟関係もないので彼女は「不思議」だと言っていた。しかし、同じアーティストとしてそれ自体(お互いに何の関係もないのに共通するものがあった点)は喜ばしいことだとも言っていた。

因みに、ジェルバブエナは今をときめくフラメンコの花形スターである。

                                                    

                                                                                                         2009・3・5

                                                         

 スペインからの便り(橋本ルシア氏より)ーその1

スペインでも観るに耐えるもの、何かを感じさせるものは全体の1割未満と言うことだ。「その多くは『現代観光フラメンコ』で、空疎な物真似、小手先踊り、変な見せ方ばかりが先行して拍手もできないものが多い。特に昨今のスペインのバイレ(踊り)の衰微は著しい。さらには、欧米諸国(オランダ、ドイツ、アメリカ etc)の観光客なのか、出演者のクルシージョに出ている観客なのか、これぞ本場のフラメンコとばかりすぐにスタンディング・オベーション、これほどスタンディング・オベーションが安っぽいものかとあきれかえり、日本も含め諸外国の観客のレベルの低さに開いた口が塞がらなかった。この単なる興業的だけとしか言いようのない『現代観光フラメンコ』が今の趨勢であるなら、私はフラメンコをもうやめようかとも思ったが、私はフラメンコで生きているのではなく、フラメンコを生きようとしているのだから、どこかで今でも「食べていくのは大変だけど、喜び」と言いながら魂に揺さぶりをかけてくるような歌を、踊りを、奏でている人々がいると信じる。」と言い切った。

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スペインからの便り(橋本ルシア氏より)ーその2

「マリオ・マジャの作品はやはりその大きさと深みにおいて他の追随を許さない。内面的必然性がまるで違う、そして今なお新鮮である。彼は私の師でもある。」

                                                        

 ※「対談 橋本ルシア氏に聞く」ーカテゴリ「五叉路」参照 

                          

                                                                                                                                                                                        (転載・複製厳禁)        

                                                                                    

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