61.We are not ABE.

 2015年1月、 報道ステーションの生放送で古賀茂明さんが「I am not ABE」と掲げてコメンテーターを事実上降板となったことはまだ記憶に新しいはずである。古賀さんがそれによって意図した二つのこと、すなわち、一つは米国と一緒になって世界中で戦争するというような日本人像の否定、もう一つは政権批判した者が次々に排除される状況の中で局やコメンテーターの奮起を促すという意味、後者の期待は見事に裏切られてしまったことは改めて言う必要もないことである。現状は、古賀さんが最後のコメンテーターとなってしまったということである。

 古賀さんは海外の実情もよくご存じなのであろう。一般に、海外ではABE=「あなた」として見なされているのである。だから、意思表示として「I am not ABE」としない限り、ABEの支持者か賛同者とされてしまうことになる。存在自体が問題となっているのであって、ここで認識論は問題にならない。したがって、何か事が起こって、巻き込まれてしまってから「I am not ABE」、「I have nothing to do with ABE」といくら訴えてもまったく無意味なのである。ABEとはまったく「関係ない」目的で海外に出たにせよ存在論的に無関係というのは在り得ないので、それなりの「覚悟」が必要になるということである。今では海外に出る出ないも関係なく、無関心であろうとなかろうと、同様の覚悟を強いられることになる。

 古賀さんが最後の出演でガンジーの言葉を出したというのは知らなかったので、その言葉をそのまま載せることにする。それは今の私のスタンスとも重なるからである。

 「あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである。」

 それは日々の「洗い直し」と自己確認であると思っている。

 いつの間にか置かれた状況に自分自身が慣らされ、変形させらているのも気付かず、重要な問題を見過ごして取り返しのつかないことになってしまっているというのが現状でもある。今までの付け焼刃の「民主主義」が露呈し、根底からの捉え直しを迫られているともいえる。

 

※古賀茂明:元経産省官僚。2011年6月辞職届を提出するように海江田万里(元経産省大臣)、松永和夫(事務次官)より通告される。「日本中枢の崩壊」(2011年5月)、「官僚の責任」(2011年7月)などの著書がある。

 

                          2015 12/31-2016 1/1

 

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