Mathilde Etienne(マチルド・エチエンヌ)は女優、ソプラノ歌手、演出家である。パリ国立音楽院で古楽を専攻。フランスの新しい世代を代表するバロック音楽のスペシャリストである。女優としても10本程の映画に出演している。その日、彼女は、ギリシャ、ルネッサンス、バロック時代の演技について話をしていた。彼女の均整のとれた豊満な肉体が作り出すS字曲線は一瞬にしてに当時の舞台を蘇らせた。女優である。話している時の彼女は演出者としての冷静な目になってはいるが存在が醸し出す独特の香りは、確かに演者のものである。それは知性に裏打ちされた感性のみが持ちうるエロスである。機会があれば是非出演してもらいたい女優のひとりになった。声もいい、フランス語の響きも、動きも滑らか、比較するのも憚られるがこのレベルにおいては日本の女優、特に彼女と同世代の女優はまったく思いつかないのである。
最後に、彼女が中世フランス語の発音で詩の朗読をした時、確かに私は中世フランスの一隅に座していた。
2011 11/10