103.二人の愛すべき人の逝く

 梅原猛、市原悦子の両氏が1月12日亡くなられた。愛すべき方々です。私にとっては、梅原氏は「哲学者」というより、こよなく「知」を愛された、それこそ哲学そのものですが、そのような方であると思っています。それは重箱の隅を突いて悦に入っているような学者とはまったく質を異にしています。例えば、「隠された十字架」にしても知的に刺激するものを十全に備えています。これが「息衝く知」というものです。死んだような博物館的な知識を寄せ集めて、いくらひけらかしたところでそれは決して現在に脈打つことはありません。

 梅原氏の飽くことのない知的冒険の人生に賛辞を惜しまず、そして、その最期にご冥福をお祈りします。今頃は、ご母堂の胸に抱かれていることと思われます。

 市原悦子氏も素敵な女優さんであることは言わずもがななことですが、「戦争をなくすこと、世界の問題と関わることも、女優の大事な仕事」などと何気なく言うこの意識レベルもやはり半端ではありません。樹木希林氏などをうならせるさりげない演技も到底小手先でたどり着けるものではないことの証左でもあります。一時はよくても、すぐに燃え尽きるような演技は所詮、本物の領域にはないのです。今頃は、永久の夢路で、女優であったことも忘れて世界を駆け巡っているのではないでしょうか。ご冥福をお祈りします。因みに、若くして死んだ私の母は市原さんの大ファンでした。

 

                                2019 1/15

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