129.ココ・シャネルの実像

 マリー・ローランサンの「マドモアゼル シャネルの肖像」にシャネルのすべては描かれていると思われる。やはり芸術家の心眼にはシャネルの偽らざる真実が見えていたのであろう。確かに、シャネルは不幸な境遇から身を立てたという同情すべきところはあるが、その成り上がり方には反感を買ったのも事実であろう。特に第二次大戦中のパリでのナチスの将校との関係、さらにゲシュタポ(ナチスドイツの秘密国家警察)の手先にまでなっていたというところまでいくともはや反感などという次元の問題ではなくフランスの一般市民にとっては「裏切り者」という意識の方が強いであろう。戦後、パリで活動できなくなるのも当然である。

 ※シャネルの反ユダヤ主義的傾向が19世紀後半ドイツなどヨーロッパ諸国に興ったユダヤ人差別運動(アンチ・セミティズム)、後にこれはナチスの政治目標となるが、それがシャネルの反ユダヤ主義と共鳴し合ったのである。どちらにしても彼女が人種差別主義者であることに変わりはない。

 日本ではいまだに「シャネルの5」などをフランスの代表的香水などとありがたがっている向きもあるようだが、意識の高いパリジェンヌなどは果たしてどうか、推して知るべしであろう。

 香水についても、ファッションデザイナーとしても、ココ・シャネルなどは私にとっては縁もゆかりもない人物ではあるが、いつかマリー・ローランサンの描くシャネルの肖像を見てすべてが腑に落ちた。それについては長くなるのでまた別の機会にしよう。

 

                                 2018 2/1

 

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