都市のど真ん中での餓死、それもさもそれらしき所で起こったことではない。知り得る限りのその内情は、夫の死後、妻は月5万円程の年金と残された預金で食いつないできたが預金も底を突き、いよいよ年金だけとなったが5万円ではとても生活はできない。そうかといって生活保護は持ち家があると受けられない。夫との思い出のある家を売って今更公営の賃貸住宅に住むつもりもなかった彼女はここで生きられるまで生きようと決意する。そして、それから何か月後かに衰弱し切った彼女は息を引き取ったのであろう。発見された時にはすでにミイラ化していたという。78歳であった。瀟洒な一軒家での餓死である。誰もがどうしてと思うような出来事だが、様々なことが重なればこんなことは容易に起きてしまうのが今の実情である。そして、今後も増えるであろうと思われた。生活保護にしても、本人がやんごとなき事情で縁を切った親族に対する支援の打診などプライドの有無とは関わりなく本人を追い詰めるだけであろう。場合によってはそれだけで自死に至る。それも計算の内なら何とも容赦のない惨い仕打ちである。彼女の健気な真面目な生き方を考えると何ともやるせない思いに駆られる。
2015 7/10(実際にあったことを思い出して)